犬と猫の
シニアケアの重要性
どうぶつも人と同様に、歳をとっていきます。しかしそのスピードは人よりもかなり早く、目安ではありますが、小型犬や猫の7歳は人の40代中盤に相当し、大型犬では5歳で人の40代に相当するといわれています。
老化によりどうぶつの体には様々な変化が現れます。免疫力が低下することで、細菌やウイルスなどの感染症にかかりやすく、治りにくくなります。また、肺活量の低下や心拍出量の低下など、心臓や肺、腎臓など内臓の機能も徐々に落ちていきます。
目に見える変化としては、以前よりも歩くスピードがゆっくりになったり、後ろ足がもつれるなどがあります。老化で筋肉や骨量が低下すると運動器に影響が見られ、関節炎も発症しやすい状態です。
このように、老化自体は病気ではありませんが、老化により様々な病気にかかりやすくなります。
シニアペットの特徴
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- 以前よりも水をたくさん飲む
- トイレ(尿)の回数が増えた
- 正確な場所にトイレができない
- 以前に比べて動きが鈍い気がする
- 外に出るのを嫌がるようになってきた
など
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人間との年齢の違い
諸説ありますが、人間の1年は犬と猫の4~5年に相当するといわれています。このように人と比べると、犬猫の年をとるスピードが早いことはよく知られていますが、人より見た目が変わらないのも重要な点です。そのため、飼い主様も体の変化を見過ごしがちになり、トラブルに気づかないケースも多く見受けられます。
特に、獣医療の進歩、生活習慣の変化、バランスの取れた食生活などによって、犬・猫の平均寿命は以前に比べて伸びてきています。その分、加齢に伴って起こる健康トラブルが多く見られるようになりました。 -
犬の年齢
イヌの年齢 2ヶ月 6ヶ月 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 6歳 7歳 8歳 9歳 人間の年齢 3歳 9~
10歳15~
18歳22~
24歳27~
28歳31~
33歳36~
37歳41~
42歳45~
46歳48~
51歳54~
55歳10歳 11歳 12歳 13歳 14歳 15歳 16歳 17歳 18歳 19歳 20歳 56~
60歳63~
64歳68~
69歳71~
73歳77~
78歳80~
82歳85~
87歳89~
91歳93~
96歳98~
100歳100~
105歳イヌの年齢 人間の年齢 2ヶ月 3歳 6ヶ月 9~10歳 1歳 15~18歳 2歳 22~24歳 3歳 27~28歳 4歳 31~33歳 4歳 31~33歳 5歳 36~37歳 6歳 41~42歳 7歳 45~46歳 8歳 48~51歳 9歳 54~55歳 10歳 56~60歳 11歳 63~64歳 12歳 68~69歳 13歳 71~73歳 14歳 77~78歳 15歳 80~82歳 16歳 85~87歳 17歳 89~91歳 18歳 93~96歳 19歳 98~100歳 20歳 100~105歳 -
猫の年齢
ネコの年齢 2ヶ月 6ヶ月 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 6歳 7歳 8歳 9歳 人間の年齢 3歳 8~
9歳13~
18歳24歳 28歳 32歳 36歳 40歳 44歳 48歳 52歳 10歳 11歳 12歳 13歳 14歳 15歳 16歳 17歳 18歳 19歳 20歳 56歳 60歳 64歳 68歳 72歳 76歳 80歳 84歳 88歳 92歳 96歳 ネコの年齢 人間の年齢 2ヶ月 3歳 6ヶ月 8~9歳 1歳 13~18歳 2歳 24歳 3歳 28歳 4歳 32歳 4歳 31~33歳 5歳 36歳 6歳 40歳 7歳 44歳 8歳 48歳 9歳 52歳 10歳 56歳 11歳 60歳 12歳 64歳 13歳 68歳 14歳 72歳 15歳 76歳 16歳 80歳 17歳 84歳 18歳 88歳 19歳 92歳 20歳 96歳
シニア期に
気を付けたいこと
動物達は、人間の言葉で身体の状況を訴えることができませんし、かつて出来たことが出来なくなるのを「年を取ったからだな」とは考えません。そのぶん、さまざまな変化のサインをキャッチし、ペットに適切な医食住をレイアウトするのは、飼い主様の役目になります。日頃から、動物達をよく観察しておきましょう。
シニア動物への接し方
「目が見えないから、散歩に行く必要はないだろう」「耳が遠いから、話しかけても意味がないだろう」などと、つい考えがちですが、そんなことはありません。
視力が落ちてきても、普段過ごしている部屋配置を変更しなければ、動物は習慣や音、においなどを頼りに行動できます。逆に、野外や知らない場所は見えない分怖がる子もいますので、飼い主様がうまく誘導してあげる工夫が必要です。足腰が弱った子でも同様に、体を支えやすいハーネス等を用いながら、上手に促してあげると快適にお散歩ができます。
聴力が弱った場合も、動物の近くで床を少し叩きながら近づくなど、振動で飼い主様の居場所を知らせてあげてから触れると、びっくりさせずに触れることができます。
犬猫達は、そばにいるあなたのことを、出会った頃からずっと観察しています。身体機能が衰えたくらいでは、彼らの信頼は揺らぎません。「もう年だから」と諦めるのではなく、その時その状況に合った付き合い方を、一緒に考えましょう。
シニア期の治療
よく聞かれる質問に、「何歳まで麻酔をかけることが出来ますか?」というものがあります。答えは、「時と場合による」というのが、正直なところです。
皆様は、年を取ってから体のあちこちを骨折しても、手術はしないでそのままにしますか?逆に、高齢になってから、生活に支障がない良性のオデキを取るために、全身麻酔下で手術したいですか?
動物達の治療も同じです。そのときの症状、その子の体力など、総合的に見て、どんな治療を行うか判断します。また、なるべく苦痛は取ってあげたいので、例え手術が出来なかったり、強い薬を使えなかったりしても、体が楽になる処置やお薬、サプリメントなどを、皆様にお勧めしています。
オゾン療法
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オゾンガスを用いた治療法の総称である「オゾン療法」。まだまだ日本では馴染みの薄いものの、ヨーロッパでは歴史のある治療法として有名です。人への医療では、血液クレンジング、皮膚疾患や歯周病治療などに活用されています。
副作用はないので、手術の適応が難しいケース、従来の治療プランでは対応が難しい「腫瘍」や「アトピー」などの難治性疾患に適用可能です。
ただし、幼犬や甲状腺機能亢進症の子は、治療が難しい場合があります。ご了承ください。 -
オゾンの働きと効果
オゾンは酸素原子3個でできた気体です。化学式では「O3」と書きます。非常に不安定な性質を持っているのが特徴で、酸素原子「O」を放出し、酸素「O2」に変わろうとします。そのような酸化反応を利用するのがオゾン療法の要です。
酸化によって生じた活性酸素は、少量であれば細胞を活性化させて、抗酸化力を高める効果が期待できます。酸化は悪いことばかりではないのです。免疫力の向上、血の巡りの改善をさせることで、各種疾患の予防・改善・再発防止に効果を発揮します。 -
オゾン療法の種類
体内に入ったオゾンは、すぐに酸素に戻る性質があります。そのため、体内に成分が留まらず、安全性にも問題はありません。また、処置後に大きく体力を消耗することもないので、シニアのワンちゃんやネコちゃんの治療に効果的です。
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注腸法
当院での治療の中心となるオゾン療法のテクニックです。直腸に細いカテーテルを挿入し、直接オゾンガスを注入していきます。
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皮下注射法
ワンちゃんやネコちゃんの症状によっては、オゾン療法において皮下注射法を選択することがあります。患部皮下にオゾンの気体を注射していきます。
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自家血液療法
血液を採取し、オゾンを入れて、再び血管に戻す方法です。人間の医療分野では、美容整形などで利用されていて「血液クレンジング」とも呼ばれています。
※当院では行っておりません
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シニア動物とのエピソード
ある柴犬の女の子は、子犬の頃から当院に通ってくれていた美人さん。途中から、旦那様となる柴犬の男の子とその飼い主様も来院してくださり、2頭の間にめでたく子犬も生まれ、親子とも当院で診察させていただくことになりました。シニア期に入り、腎臓病を発症。それまでは好き嫌いの少ない子だったのが、食べるものを選ぶように。加えて療法食に切り替えていただいたので、飼い主様は大変苦労されました。でも、諦めたくない!いろんな食事やケア方法を相談して、探して、試して、続けて、……そして彼女も、それに応えてくれていました。当院のシニアケアに、様々なことを教えてくれた1匹です。
あるキジトラ模様の女の子は、しっぽの長い元保護猫。先住猫達がこの世を去って一人っ子になった途端、唯我独尊な本性を発揮。やはり腎臓病が発覚してからは、食欲が落ちて飼い主様を心配させました。ところが……数回の入院や頻繁な通院から帰宅すると、いつもヤケ食い!どれだけ症状が進行しても、ウェットフードに飽きたらドライフードを要求!そして最期まで何度でも立ち上がる彼女の生命力に、飼い主様も我々も勇気づけられました。
ペットも人間同様、シニアになると通院の回数が増え、飼い主様にも時間、体力、精神、金銭など、様々な面で負担がかかります。その反面、これまで重ねた歴史の分、とても穏やかで優しい生活を味わえる時期でもあります。皆様がシニア動物との素敵な暮らしを楽しめるよう、当院にできることをサポートしていきたいと思います。